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1945年の石油危機:国民総動員の愚かな試み、松根油で「凱歌」 山林荒廃の一因にも

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1945年の石油危機:国民総動員の愚かな試み、松根油で「凱歌」 山林荒廃の一因にも

「埋もれた戦力・松根掘出せ」。そんな標語を掲げるポスターが太平洋戦争の末期の1944年、全国に配布された。編隊飛行する日本軍機と松の切り株を掘り起こす人たちの絵が添えられ、陸軍省、海軍省、農商省などが名を連ねる。

松の樹液(松脂(まつやに))集めも推し進められ、「銃後の守り」の老若男女が全国各地で松の根掘りや、幹に取り付いての松脂集めに動員された。松の根や松脂が、戦力になるのだろうか。

長野県上田市の西部、集落の外れにある馬背(ませ)神社。広葉樹に交じり、1本の松が立っている。よく見ると幹がえぐられ、その内側にV字形に左右計52本もの切れ込みが刻まれていた。

「戦時中に松脂を採取した跡。木の悲鳴が聞こえてくるようですね」。地元の自然保護団体・ヤマンバの会事務局長の村山隆さん(79)がつぶやいた。「飛行機の燃料にしようとしたんですよ」

松根油は根から抽出され、溶剤などに使われる。松脂は古くから明かりの油、滑り止めや加工材料になってきた。当時の政府・軍部は、それを航空機用燃料にしようと考えた。

きっかけは44年7月、「ドイツでは戦闘機を飛ばした」との駐独海軍武官からの電報とされる(石井正紀著「陸軍燃料廠」など)。ただ確認はされておらず真相は謎。確かなのは当時石油の在庫が急速に減少し、この先の調達も絶望的だったことだ。

政府は44年10月、「松根油等緊急増産対策措置要綱」を策定。当時の農商省は同年度内に4・2万キロリットルを生産するため、延べ約1200万人が必要と試算した。

45年3月には松脂やヒノキの根、針葉樹の枝葉、皮も対象としたうえで、前年に16万キロリットルとした目標を40万キロリットルに増やした。海軍は精製用の乾留釜3万個の製造を進めた。

報道機関も推進の一翼を担った。45年8月10日の毎日新聞は「“新油田”松脂で凱歌(がいか)」との見出しの記事を掲載。「素晴らしいオクタン価を示した。敵米の石油を尻目にかける新しい日本的高性能の航空燃料だ」「精製法は完成された」とあおり立てた。

「ヤマンバの会」は2003年、馬背神社の松の枯死を防いだことをきっかけに、松根油の歴史を調べてきた。体験者への聞き取り調査も実施し、証言録を作った。

戦後間もない46年2月作成の米国の戦略爆撃調査団石油・化学部報告の訳書「日本における戦争と石油」(奥田英雄、橋本啓子訳編・石油評論社)に、こう記されている。「きわめて不安定で急…

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