「GLS1阻害剤否定」への反証、老化治療の本当の鍵とは
最近「老化研究」や「老化は治療できる」という言葉をよく目にするが、実際にどのような研究がどこまで進んでいるのだろうか。ヒトが老いを克服する日は来るのだろうか。GLS1阻害剤という薬を使って老化治療研究で大きな成果をもたらした、この分野のトップランナーである中西真先生の研究室に行ってみた!(文=川端裕人、写真=的野弘路)
この記事は、老化治療研究を深掘りする連載(全6回)の第5回です。第1回「 老化は本当に治療できる? 最前線の研究者に聞く「若返り医療」の現在地 」は無料で全文公開しています。
2026年4月、論文誌「EMBO Reports」に、中西さんの2つの研究成果(GLS1阻害剤、抗PD-1抗体)について検証する 論文 が掲載された。
大阪大学微生物病研究所の原英二教授と河本新平准教授(現・東北大学教授)が主導したもので、熊本大学、がん研究会がん研究所、京都大学、国立長寿医療研究センター、国立循環器病研究センターが参加した共同ブラインド追試だった。
大阪大学のプレスリリースでは、「社会的関心が高い分野であればこそ、その有効性の評価には特に慎重かつ厳密な検証が求められます」とした上で、中西さんらの研究がNHKで紹介された際の記事「老化した細胞 取り除いてみると… 若返りが可能に?老化研究の最前線(2022年12月23日)」のリンクを示している。つまり、社会的関心が高い分野であるがゆえに期待が先走りすぎている現状に対して批判的な立場から検証を行っていると理解できる。
この検証は非常に本格的なものだ。複数の研究機関が参加する中で、解析者を盲検化したり、動物実験のデザインを工夫することで、加齢マウスにおける個体差や実験者バイアスの影響を最小限に抑えようとしている。
・培養細胞において、GLS1阻害剤は、たしかに、老化した線維芽細胞に細胞死を誘導したが(約50%死滅)、非老化細胞にも影響があった(約7.5%死滅)。つまり老化細胞への選択性はあるものの、完全ではない。
つまり、培養細胞に対する使用では、一定の老化細胞が除去されたが、非老化細胞も同時に除去され、十分な選択性がないのではないかという疑義。さらに、老齢マウスに投与した場合は、老化細胞マーカー遺伝子(p16、後述)の発現を有意に低減せず、握力などの改善も見られなかったという衝撃的な再現結果が投げかけられた。
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