みんなの高校野球:7回制で地方大会安全に 酷暑で「絶滅」危惧 三重高野連理事長
記録的な暑さに加え、地方では人口減少と少子化の影響も大きい。そのような状況で高校野球を次世代に残すにはどうすればいいか。試合を午前と午後に分ける「2部制」を地方ではいち早く導入するなど、試行錯誤を重ねている三重県高野連の栗谷佳宏理事長に聞いた。【聞き手・黒詰拓也】
1986年に三重県の高校教諭になり、野球部の監督や部長を経て、2022年から県高野連の理事長を務めている。長年現場を見てきて思うのは、地方大会のことを考えたら、7イニング制にすべき時が来たのではないかということだ。
春夏の甲子園大会が行われる阪神甲子園球場は、選手たちにとって非常に恵まれた環境と言える。夏の大会では暑熱対策としてベンチに冷房設備があり、ドクターや理学療法士、大会スタッフも大勢控えている。万一、選手が体調を崩しても素早く対応できる。
しかし、地方は違う。照明を含めて設備や態勢が万全という球場は少なく、運営を担う教員や審判の人繰りが厳しい時もある。夏の甲子園を懸けた大会では、まだ暑さに慣れていない選手や観客が2時間以上の試合で炎天下にさらされている。
三重県では最も暑い時間帯を避けるため、試合を午前と午後に分ける「2部制」を25年から夏の三重大会の全日程で導入し、1球場につき1日最大2試合としている。ベンチには可能な限り冷風機を置き、選手は携帯扇風機を使うこともできる。記録員も1人から2人に増やし、お茶や氷のうを用意するなど暑さ対策にも当たってもらうようにした。手を打ってきたが、7イニング制で試合時間が短くなれば、熱中症のリスクを根本から減らすことができる。
私が子どもの頃は気温が30度を超えたら驚いていた。この夏は東海や四国、九州地方などで40度以上を観測した。以前の感覚で野球をしてはいけない時代となったのではないか。
少子化が進み、スポーツや趣味が多様化した。三重県内の野球部の男子部員数でみると、今年は1973人で10年前と比べ約500人減った。暑さを理由に野球から遠ざかる子が増え、競技人口が減れば、将来「7人制」や「男女混合チーム」という議論も出てくるかもしれない。
今春、三重県の高校1年生に7イニング制の賛否を聞くアンケートを取った。答えてくれた518人中、「反対」が74%の383人、「賛成」が19%の99人、「分からない」が7%の36人だった。反対の理由を尋ねると、「八、九回にドラマが生まれるから」「逆転が減り、面白くなくなる」といった声が多かった。
大人でも同感という人はいるだろう。でも見方を変えると、それらは感情的な理由であり、厳しく言えば固定観念かもしれない。7イニング制でも終盤の攻防はあるし、最終回に試合がひっくり返るケースも見られるだろう。反対派が多くても決断しないといけないこともある。今回は球児や観客の命にも関わる問題だ。日本高野連がリーダーシップを持って決めるべき時だと思う。
私もずっと「野球は9回」と思ってきた。歴史と伝統は大事だ。今年、春夏の甲子園はそれぞれ第98回、第108回大会を迎えた。日本高野連は「高校野球200年構想」で次の100年を見据えて普及活動にも取り組んでいる。野球を残すためには競技の魅力を伝えることに加え、時代と環境に応じたルールを作ることも必要だと思う。
1962年生まれ、三重県出身、大阪体育大卒。三重県の保健体育教諭として、複数の高校で野球部監督。県立松阪高の部長だった2012年夏に甲子園に出場した。22年から現職。
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